コロナ禍の出社による蔓延リスクを労働法で制御すべき
私塾「花草舎」塾頭の九兵衛です。
コロナ禍の出社による蔓延リスクを労基法で制御すべきという話です。
厚労省はHPで以下の解釈を示しています。
- 指定感染症なので、感染が判明した場合は感染症法に基づき、知事が就業制限や入院の勧告等を行うことができる。(企業ではなく知事の判断)
- あくまでも感染症法の範疇であって、労働安全衛生法第68条に基づく病者の就業禁止の措置の対象ではない。(企業の義務ではない)
なぜ、労働安全衛生法ではないのかというと、こんな古臭い通達が生きているからだと思います。
「伝染させるおそれが著しいと認められる結核にかかっている者」
(平成12年3月30日基発207号)
わざわざ、通達レベルで結核と特定しちゃっています。
しかし、労安則61条1項1号では「病毒伝播のおそれのある伝染性の疾病にかかつた者」となっています。
労働安全法レベル(国会の立法レベル)では配慮された条文になっており、省令レベルでは、一応解釈できる範囲に規則になっているにもかかわらず、20年前の局長が「結核」に限定してしまったために、適用除外になってしまった訳です。
そんな古臭くて時代に合わない通達は変えれば良い。そう思うのが世間の一般常識ですが、霞ヶ関はXX年前の局長は今の事務次官、または事務次官OBということになり、後輩が先輩の判断を覆せない「負の硬直的構造」となっているのは周知の事実。一筋縄では行かないのでしょうね。
ですので、議員が改正法を特措法などの時限立法でも良いから強制的に変更しなければなりません。最も簡単なのは、労安則61条1項1号は「病毒伝播のおそれのある伝染性の疾病(指定感染症を含む)にかかつた者」とするのが良いと思います。
つまり、事務職・営業職についてはコロナ禍で出社させたことで(意図せざるであっても)蔓延に加担した企業責任を労働安全法で問うべきですね。物流や研究所、工場などの勤務場所の代替が効かない職種については、社外のとの接触を避けるために、通勤バスなどの移動措置を含めた拡散防止措置を義務づけるべきです。
蔓延防止措置条例や緊急事態宣言などだけではなく、また飲食店などのみに負担を求めるのではなく、企業も蔓延の加害者になりうるので相応の義務が必要です。
ここら辺の解釈は政府内や厚労省でも議論があったのかもしれません。しかし「経済を回すことが優先」で企業に義務付けるのはやりたくないという意思が働いたのかもしれません。しかし、労働安全法は経済成長率や国の財政負担とは全く次元の異なる問題であって、そのような周辺事情とは分離独立して機能すべきです。仮に、そのようなことが行われたのであれば、政治家(または官僚)が恣意的に他の法律を侵害したという行為になります。